グアナファトから一緒にカンクンへやってきた私達の愛車。
国土が広いメキシコなので長距離運転をする機会も多かったのか、2003年製の割に走行距離は19万kmと、日本ではあまり目にしない距離を走っている。
旅の途中に何度か故障はしたけれど、その度に直しながら乗り続けていた。
カンクンへ引っ越した後も、車を購入したグアナファトナンバーのままで過ごしていたのだが、警察に止められることが続いていた。
今思えば街に慣れてなくて、浮ついた気持ちが運転に出ていたのかもしれない。
さらに、購入したグアナファトのプラカ(ナンバープレート)のままだったので、言って見れば外人が東京を他府県ナンバーで走っているようなもの。
目につきやすかったのだろう。
キンタナ・ロー州の警察は、メキシコの中でも特に腐敗しており、なんだかんだといちゃもんをつけてはガンガンカツアゲしてくる。
その度に、不良警官の気分次第でお金を失うので、たまったもんじゃ無い。
プラカを変えた方が良さそうだなと思いながらも、しばらく乗っていたのだが、
エアコンなしの愛車でカンクンの夏を過ごしてみて、あまりの暑さに何度も意識朦朧状態になった。
車内の暑さは身の危険を感じるほどったので、思い切ってエアコン付きの車に買い替えることを決意した。
中古車を売買するには、キンタナ・ロー州のナンバーに変えたほうが手続きがスムーズだと言われたので、まずはプラカ(ナンバープレート)を交換することに。
ただ、プラカを変える手続きが全くスムーズではなかった…。
あまりにも長かったこの手続き。
結局、半年かかった手続きを時系列で振り返ってみる。
スーパーの入り口にあるカンクンの陸運局。 |
9月
メキシコでは免許証も州が発行しているので、引っ越ししたら変更手続きが必要。
まずは警察署で免許更新をした。
少し待ったものの、問題なくキンタナ・ロー州の免許証を発行してくれた。
スムーズな滑り出しだ。
次に、本来の目的であるプラカの変更ができる陸運局の場所を教えてもらい、早速車を走らせる。
途中の車内では、売り値を考えたり、エアコン付きの車の快適な日々を想像したり、インターネットで売りに出すのもいいかもね、などと話していた。
この時点では、うまくいけば当日新しいプラカをもらえると思っていたので。
陸運局は、週末にチアンギス(青空市場)が開かれているエリアのお向かいにあるスーパー、「チェドラウィ」の中にあった。
その辺にいた人にプラカの交換にきたことを告げると、2階にで手続きをしていると教えてくれた。
2階に上がると、7、8人の人が待っていて、ちょっとした列ができている。
担当者がランチを食べているからみんな待っていると。
仕方ないので、素直にしばらく待つ。
しばらくすると、ランチを食べ終わった担当者が現れ、仕事を再開した。
順調に列が進み、私たちの順番に。
私「あのー、プラカを交換したいんですけど。」
担「はい。それでは直近5年分の税金支払い証明書を提出してください。」
私「あ、証明書はないんですけど、購入した時に調べてもらったので、しっかり払っています。滞納はしていないはずです。車体番号で調べられますか?」
担「調べられません。直近5年間の税金支払い証明書の原本が必要です」
私「そ、そうなんですか?困ったな…。グアナファトの陸運局に聞いてもらえませんか?」
私たちが車を購入したグアナファトでは、中古車を売買する時、税金の支払いはもちろんチェックされるが、書類の提出義務はないため発行していなかった
そして耳を疑うようなことを言い出す担当者。
担「メキシコ合衆国の中で、唯一グアナファト州だけが他州との郵送のやり取りを行っていません。ですので、直接取りに行ってください。」
私「え?グアナファトまで?行かないとダメなんですか?」
担「はい。証明書をもらったらまた来てくださいね。はい。次の人ー。」
信じられない気持ちでグアナファトの陸運局に問い合わせる。
電話に出たのはゆっくりとした優しい口調で話す、担当者。
久しぶりにグアナファトの日々を思い出して、懐かしい気持ちになったのもつかの間、
ゆっくり、はっきり、聞き取りやすい声でこう言われた。
グアナファトの担当者「そうですね。本人が来ないと発行できませんね。」
10月下旬
ドキドキしながら会社に休みを申請。
10日間の休みをもらう。
メキシコのLCC、ビバ・アエロブスを利用して、メキシコシティを経由し、懐かしのグアナファトへ。
早速、陸運局へ税金支払い証明を出してもらいに行く。
陸運局で待っている間、
カンクンから飛行機やバスを乗り継ぎ、時間とお金をかけてここまできたので、ここで「書類の不備で出しません」
なんて言われたらどうしようと、不安な気持ちが膨らむ。
しっかり書類は揃えてきたし、何度も確認したから大丈夫なはず…。
心配は杞憂に終わり、あっさりと税金証明をだしてくれ、無事受け取る。
一安心。
11月
陸運局は平日しかやっていないので、Miaが一人で税金証明書や必要書類を持って再び陸運局へ。
もう問題は何もないはずだった。
すると、今はプラカが品切れなので渡せないと。
プラカって品切れるものなのかという思いを抑えながら、なんとか交渉するMia。
そこで、再び耳を疑うようなことを言い出す受付嬢。
受「古いプラカはをグアナファトに直接返しに行ってくださいね。あと、車の所有者本人(私)じゃ無いので、プラカがない間の一時許可書も発行できません。」
職場にいた私の携帯に、怒髪天を衝く絵文字で報告メールが入った。
M「グアナファトに返しに行かなければならないって言われたけど、私絶対に信じない。」
仕方なく、再び慣れ親しんだグアナファトのプラカを取り付けて家に帰る。
プラカが届くという年明けまで待つことに。
まだそんなに人がいない頃 |
1月
今回こそはと、強い決意を持って再び仕事を休み、二人で三たび陸運局へ。
すると、あふれんばかりの人、人、人。
受付に至るまでに、人員整理専門の人がいる。
気だるそうに人員整理をしているのはおばさん。
気が滅入りながらも列に並ぼうとすると、おばさんがこう言った。
おば「もう今日のプラカは売り切れた。手続きもできない。並んでも何もできないから、今日は諦めろ。そしてから明日の朝4時半に来い」
ショックな一言だったが、こっちも仕事を休んできているのでそう簡単には帰れない。
嘘だと思って列に並ぶ。
1時間ぐらい待ってやっと受付にたどり着く。
そして、駐車場の男を紹介される。
この時点で入り口のおばさんが嘘をついていたことが判明。
どうやら、人が多すぎるから適当なことを言って明日へ回してるようだ。
駐車場へ行くと、それらしき男が待っていた。
書類を見せようとすると、それには目もくれず、「車はどれだ」と。
車へ連れて行くと、ボンネット内部に刻印してある車体番号をメモる男。
そのメモを持って受付に提出すると番号札をもらう。
再び番号札を持って待つ。
システムはよくわからないが、なんとなく行程が進んでいる気がする。
順番が来てようやく新規プラカの登録、支払い、そしてプラカが無い間の許可書の紙をもらう。
やっぱり、プラカはなかった。
でも古いプラカは何も言わずに受け取ってくれた。
グアナファトには返しに行かなくていいようだ。
この日は朝から7時間待ち続けた。
担「1月末には、絶対に新しいプラカが届くから!」
と言われた。
2月中旬
どうせ1月末ではまだ来ていないだろうという読みで、さらに待ち、2月中旬に三たび仕事を休んで陸運局に行く。
まだ届いていない。
そして、プラカの受け取りは車の所有者でなくてもできるということを教えてもらう。
夫婦であれば所有者と同じ住所の証明ができれば受け取り可能だそうだ。
免許書の裏に住所が書いてあるので、それを持参すれば妻が受け取れると。
もうこれで仕事は休まなくてもよくなった。
3月28日
Miaが一人でもう何度目かの陸運局へ。
かつてないほどの人で溢れている。
人員整理の人はいたが、若いお兄ちゃん変わっていたそうだ。
嘘つきおばさん、クビになったんだな…。
そして、ここにきてプラカの受け取りには、車の所有者のビザと住所がわかる公共料金の請求書が必要と言われる。
もちろん初耳。
3月29日
翌日、Miaがお弁当と待ち時間用の電子書籍を持参して、準備万端で行くと更に凄い人、人、人。
あまりの人の多さにテレビ局が取材に来ている。
すると、Miaの前に並んでいた人の様子がおかしい。
仕事をサボってきていたのか、テレビを見ると急にサングラスをかけておどおどしてしだす。
長時間の待ち時間でも、足の不自由な人がきたら快く列の前に入れてあげるメキシコ人。
優しい。
混乱気味の人混みの中、誰も怒るわけでもなく、順番を抜かしたりすることもなく、のんびりお喋りしたり、おやつを食べたり、テレビカメラから隠れたりしながらみんな大人しく待っていたそうだ。
この国民性はメキシコの愛すべきところだ。
それゆえ、システムは改良されないのだろう。
人があふれ出した頃 |
そして並ぶこと3時間。
ついに、ついに念願のプラカを手に入れた!
メキシコのプラカは、数字の後ろに州を代表するデザインが入っている。
例えば、お隣のユカタン州はチチェンイツアのピラミッドなんかが入っていたりする。
さらに年によってもデザインが違う。
キンタナ・ロー州は前々回がバショウカジキ。
前回はジンベイザメ。
楽しみにしていた今回、フラミンゴだったら嬉しいなあ…と思っていた今回は!
…無地。
半年待ったけど無地。
真っ白。
ついに手にしたプラカ。持つ手にも思わず力が入る。 |
はい。という流れで、無事プラカを交換することができました。
グアナファトで中古車を買う時には、念のために直近5年分の税金支払い証明書を絶対もらってくださいね。
このように、メキシコでは何事も思ったより時間がかかりますが、最終的には大体の目的を達成できます。
根気が養われますし、先進国に行った時には社会が合理的に設計されている事に感動する事ができます。
メキシコのせいで遭遇する待ち時間、その時は、無駄に感じます。
家でネットサーフィンしている時間は、後から考えると、無駄に感じます。
1年後、メキシコの待ち時間の方は、思い出にはなっているはず。
諦めて受け入れましょう。