山菜の王様は何人かいらっしゃるようなのですが、一般的に有名な王様はタラの芽ですね。
山菜好きなら春山に入れば必ず探してしまうのではないでしょうか?
タラの木はトゲが多く、一度覚えてしまえば見分けやすい木です。人気を好む植物で、民家の近くや山道に沿って生えていたりします。
タラの木は上に向かってまっすぐ生えており、先端の芽を太郎っぺと言います。太郎っぺより下の芽を二郎っぺ、その次が三郎っぺと、兄弟のように呼ばれていて、その中で採取しても良いのは太郎っぺだけと言われています。
通常は枝分かれせずにまっすぐとした一本の木に育ちますが、芽を毎年摘まれることで枝分かれしてより大きな木に育ちます。芽摘みに対抗して繁殖力を強めるのですね。良いバランスで人間がタラの木と関わることができれば、収穫量も増えてタラの木も大きくなりますが、繁殖力を上回るほど取り尽くしてしまうと枯れてしまいます。
摘む時は太郎っぺなのか、二郎っぺなのか、木を見て判断して摘みましょう。
王様の風格 |
タラの木と間違いやすい木でハリギリという木があります。芽の形も良く似ており、同じようにトゲのある木です。見分け方ですがタラの木は先端に節があり、ハリギリはありません。タラの木の節も大きくなると消えていきますが、枝先には節が残っているのでそれで判断できます。ハリギリの芽も美味しくいただけるのですが、より香り高いのは王様、タラの芽です。
自分だけが知っているタラの木の場所を覚えておいて、春になると見に行きます。他の人に取られていないか心配しながら山に入り、「あー無事だったね!」と再会を喜んですぐ芽を摘みます。タラの木はどんな気分なのかな。
木をいたわりながら、木のサイクルを応援するように付き合っていきたいですね。
二郎や三郎にまた来年会えますように。
シドケ
そしてもう一人の王様はシドケ。山菜・葉物部門の王様です。山菜らしいほろ苦さもあり香りが強く、おひたしにすると美味しいです。好き嫌いがありそうなクセの強い味ですが、クセが好きな人は大好きだと思います。
生息地は日本中ですが、京都にいる時は見たことも耳にしたことがありませんでした。東北・北海道では道の駅や産直スーパーなどにもよく売っていました。
正式名称はモミジガサで、葉の形がモミジに似ています。北海道ではギョウジャニンニクとシドケの群生地が重なり合っていて、ギョウジャニンニクを追いかけてるうちにシドケ
がでてきて、それを追いかけてるとまたギョウジャニンニクが!
と、自然に誘われ山の奥へ奥へ進んでしまい、気がついた時には道に迷ってしまいました。
なんとか無事に帰宅して、天ぷらやおひたしにして美味しくいただいた後、余韻を楽しみながらシドケのことを調べていると、恐ろしい事実が判明しました。
どの山菜も、間違いやすいよく似た植物があるのですが、シドケと似ているのはなんとトリカブト。猛毒を含有しているあのトリカブトです。
特に芽出し直後のトリカブトは、シドケによく似ており死亡事故も珍しくないようです。
トリカブトの写真をよく見て、恐る恐る自分が撮影したシドケと見比べます。
間違いなくシドケ |
多分…大丈夫!でも…写真に撮ってないのもいっぱい食べたし…
さっきまでの幸せな気分が一転して、1枚2枚トリカブトの葉っぱが混ざってたらどうしよう、死んだらどうしようと勘繰り始めてしまいました。
悶々とした時間を過ごしましたが結果は何事もなく、シドケだけを間違うことなく採集できていたようです。葉が開ききれば形の判別はできますが、若い芽だと判断が難しいようです。トリカブト、ヨモギやゲンノショウコウにも似ているので気をつけましょう!
遭難の恐怖、ヒグマの恐怖、トリカブトの恐怖…
北海道の自然には、いろいろ教えてもらいました。
山菜を最初に自然の中で見つけるまでは、見分けがつかないと思っていました。
でも、よく写真を見て形を覚えたり、山に入って先輩に教えてもらったりして一度認識すると、次からは自然と目の焦点が合います。沢山の植物の中からでも不思議なくらい認識できます。
それは、”この形の植物を採取して食べて美味しかった”という経験が記憶に作用しているのだと思います。経験を伴った記憶は強く残ります。
来年の春、ぜひ一度試してみてください。
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