アイヌ語では岬を表す”シリ・エトコ”(大地の先っぽ)。
まさに日本の最果てにあり、良質な温泉や湧き水が湧いていて、オホーツク海の恵みである海産物も最高です。
見どころはたくさんあるのですが、幸か不幸か世界遺産に登録されているので、様々な制限がかかっています。
例えば知床五湖は、時期や場所によってガイドと同行しなければ歩いて回れなかったり、知床半島の先っぽである知床岬までは道が繋がっておらず、遊覧船でしか観に行くことができなかったり。
手つかずの大自然にはもちろんヒグマも沢山住んでいます。
しかし、ツアーやガイドを利用するとなかなかの金額になり、なにより自由に過ごすことが難しそうです。
そこで色々考えた結果、車でぶらぶら回ることにしました。
美味しいものを食べて、知床の雄大な景色を楽しみ、源泉かけ流しの温泉を味わう1日コースです。
前日入り クリオネキャンプ場
朝出発 道の駅 斜里
昼食 そよかぜキャンプ場
観光 オシンコシンの滝
知床五湖散策(一湖だけ)
岩尾別温泉
フレペの滝
羅臼岳から国後島を眺める
熊の湯
行程はこんな感じで、料金は道の駅の買出し以外は全て無料です。
クリオネキャンプ場の温泉 PH7.9 弱アルカリ性
朝から1日かけて見て回りたかったので、前日のうちに移動して知床入りしました。
拠点に選んだ宿泊先は斜里町にあるクリオネキャンプ場です。
キャンプ場と言ってもバンガローやコテージ、ライダーハウスにログキャビンといろんな形で宿泊できます。
最初はキャンプしようと考えていましたが、なんとここのゲストハウス棟に宿泊すると、館内の温泉に入り放題。しかも源泉かけ流しのモール泉です。
迷わずゲストハウス棟に宿泊することにしました。一泊一人2000円。
この道東地区ではモール泉がよく湧いていて、他にもいくつか入りましたが、ここの泉質が一番好きでした。ほどよい泡つきと芳醇な甘い香り、湯は薄い飴色。
風呂上がりに知床の海の幸を肴にビールを飲んで、寝る前にまた温泉へ。
朝起きて、温泉へ。
他に宿泊客もいなかったのでいつでも館内かけ流し入り放題で、まさに贅沢の極みでした。
クリオネキャンプ場はとにかくどこもかしこも綺麗に掃除が行き届いていていて、気持ちがいいです。
自炊可能な調理スペースには調味料も豊富に揃っていて鍋類も豊富。
WIFIもバッチリです。
斜里国道(244号線)から少し海側へ入ったところで、JR斜里駅から徒歩20分くらい。
道の駅 斜里
翌日、朝風呂に入ってから出発です。
まずは食料調達のために道の駅へ。オホーツク産の新鮮な海産物をお値打ち価格で手に入れることができます。働いている人たちも親切でいろいろな話を教えてくれました。
ここでは身のぎっしり詰まった毛ガニがなんと880円!
最高に美味しかったので家族やお世話になった友人に送りました。
後で分かったのですが、毛ガニで有名な網走よりも、この斜里の道の駅のほうが送料も毛ガニの値段も安かったです。
ちなみにオホーツク産の海産物は高品質、高価格のため、漁師さんは夏の間だけ半年働いて年収2、3千万を稼ぐそうです。冬の間は 漁もないのでお休み。冬の斜里のパチンコ屋さんは漁師さんでいっぱいだそうです。地元っ娘はみんな漁師の嫁が憧れだそうです。
かわいい毛ガニ。食べられるために生まれてきたかのようなうまさ、そして食べやすさ。 |
JR知床斜里駅から徒歩3分。斜里の街の中心にあります。
そよ風キャンプ場
昼食は道の駅斜里で知床牛を買い込んで、バーベキューをしようと思っていましたが、ヒグマや野生動物が多いためなかなかバーベキューをできそうな場所が見つかりません。
知床牛を買った肉屋さんに相談してみると、このキャンプ場を教えてくれました。
開放的な芝生が広がった気持ちいい場所で人もほとんどおらず貸切状態。
名前の通り本当にそよ風が気持ちいい!
溶けそうです。
近くの海岸で拾った流木を薪にして知床連山を眺めながら知床牛を焼きました。
至福の時。忘れられないバーベキュー。 |
斜里の街から国道244号線を標津方面へ進むとすぐに出てきます。
知床五湖
極上のセッティングの昼食で腹ごしらえをしたら、知床半島の海沿いを時計回りに上がっていきます。
迫力満点のオシンコシンの滝を見て知床五湖へ。
知床五湖は季節によって歩ける範囲が決まっています。ガイドをつけないといけない時期や、利用者のレクチャー受講が必要な時期、コースもあるので事前に下調べしてから訪れるのをお勧めします。
リアルタイムの様子を確認してみると(10月25日)今日は暴風のため終日閉鎖されています。
ホームページ要確認です。
五湖のうち一湖だけは、木造の遊歩道を利用して誰でも無料で自由に見て回ることができます。車椅子にも対応しています。
地上の遊歩道を利用すれば二湖から五湖まで見て回れますが、ヒグマの出没する時期に合わせて開放されたり、ガイドやレクチャーの受講が必須など、条件が変わってきます。
私達が訪れた5月はちょうどヒグマの繁殖期(5〜7月)でした。
一湖に映る知床連山 |
案内所には大きなヒグマの剥製が出迎えてくれるので、どうしても遭遇した時を想像して今います。
歩道を歩いて行くと、鳥の声は聞こえてきますが、それ以外に音はせず、普段の生活では感じられないような静寂の空間です。
視界からは人工物が消え、白い残雪が残る山、オホーツクの海、熊笹、湖、エゾシカ。
恐竜がいた時代を想像できるスケールの大きな景色。
静かな湖の湖面に水鳥が漂い、エゾシカが水を飲んでいます。
ふと気がつくと目の前の景色に心を奪われて無心になっていました。
これも日本の景色なのかと、誇らしい気持ちになりました。
岩尾別温泉 PH6.8 中性
そのあとは少し引き返して、日本最北東の温泉宿「ホテル地の果て」へ。
ここのホテルの駐車場を超えて川辺を歩いて行くと温泉が川の横で湧いていて、誰にでも無料で開放されています。
天然の温泉、いわゆる野湯(のゆ)です。
自然が作り出した湯壷はエメラルドグリーン色をしていおり、温度もちょうどよく、滝の音が聞きながら森林浴気分で入浴できます。
泉質はこれといった特徴のない感じの湯です。景色も絶景というわけではないのですが、個人的に野湯に興味があったので訪れました。そうでなければわざわざ寄らなくてもいいかもしれません。
でも、自然に温泉が湧いてきて湯壷になって無料で利用できることに感動していたので、私は満足でした。
フレペの滝
朝から動き出してこの時点で3時くらいでした。夕日を知床峠で見ることにして、もう少し時間があったのでフレペの滝を見に行きました。
往復小一時間の遊歩道を抜けると、一面にワラビが自生していました。見渡す限りワラビで、何万本?どこまでもワラビの草原が広がっていました。
ワラビの草原 |
食べごろのワラビ。てんぷらに、おひたしに。炊き込みご飯にも。 |
フレペの滝は川から流れ出るのではなく、切り立った断崖絶壁の途中から滝が湧いている珍しい滝です。
「乙女の涙」というキャッチコピーが付いていますが、激しい断崖絶壁とものすごい水量のため、乙女感は全く感じられません。
その断崖絶壁の上から見下ろすと滝が見えます。
岬から豪快に流れ落ちるフレペの滝とワラビの草原。知床五湖のような木でできた遊歩道もないし、野生に近づけるのはこっちの方かも。
羅臼岳と国後島
羅臼岳。北方領土からも見えるそうです。 |
斜里町ウトロ地区と、半島の反対側である羅臼地区を結ぶ知床横断道路(国道334号線)を羅臼方面に走ります。
この日の空は晴れ渡り、雲も少なく、知床峠に差し掛かるころに、羅臼岳が見えてきました。
言葉が出なくなるような存在感。圧倒されていると、ふと、海の向こうに国後島が見えました。
淡い夕暮れの空と海の間に、つーっと島影が伸びていました。
ロシアなのか、日本なのか、縄文時代にはどんな人が住んでいたのか。そもそもどちらの国の所有物でもない美しいシルエットの島を見ていると、感情と時間が混ざって複雑な不思議な気持ちになりましたが、島は静かに存在していました。
水平線に浮かんでいるのが国後島。島影に色気がある。 |
いつか行ってみたいなあ。
国後島はどこ掘っても温泉が出てくるようです!
熊の湯 PH7.3 中性
日が落ちて少し体が冷えた頃、そのまま羅臼方面に少し車を走らせ熊の湯へ。
羅臼川沿いに「熊の湯」と看板が出てきます。
車を止めて小橋を渡って熊の湯へ。
地元の有志の方が管理してくださっているそうで、毎朝清掃してくださているそうです。清掃時間に訪れた人は手伝って欲しいと書いてありました。
湯船には羅臼の漁師さんが仲良さそうに、熱すぎる湯に浸かっていました。
湯は綺麗に白濁しており、肌触りも滑らかです。
知床の原生林の中で羅臼川の音が聞こえてきて、秘湯の雰囲気は抜群です。
しかし、なんせ湯が熱すぎたのでゆっくりはできませんでした。
源泉を飲むと出汁のように程よい塩加減、硫黄加減で美味しい!まるで卵スープを飲んだ気分です。
源泉を飲用してもよい温泉では必ず飲むのですが、ここが一番美味しかったです。
川沿いにあり、秘湯の趣あり。 |
旅人には無料の源泉かけ流し温泉、本当にありがたいですね。
地元の方にも愛されている温泉ですが、こちらも無料で開放されています。
このような行程で一日ゆっくりかけて知床の恩恵を堪能できました。
知床五湖はガイドさんと行くとより深い話が聞けると思います。遊覧船でしか見れない知床峠まで自力で歩いて行く人もいるみたいです。
知床はそれぞれの見たいもの、感じたいものによってどこまでも奥深い体験ができる場所だと思います。
くれぐれもヒグマには気をつけて、それぞれの楽しみ方で楽しんでくださいね!