アガタデフエゴ (Agata de fuego)
メキシコ中央高原地帯では、この地域特有の希少な鉱物が多く産出されます。
テキスキアパンでのオパール採集に続いての遊色鉱物、ファイヤーアゲートを求めてアグアスカリエンテスまで行ってきました。
ファイヤーアゲートはスペイン語では”Agata de fuego ”と呼ばれています。
アゲートとはつまり瑪瑙のことなのですが、その中でもメキシコで産出されるものは虹色の美しい遊色を持つ物が多く、神秘的な模様を形成しています。
調べてみると、ファイヤーアゲートの産出地はグアナファトから車で3時間ほどいった所にあるアグアスカリエンテスという街の近くにあるカルビージョという鉱山で主に産出されている事が判明。
前回の経験から鉱山に直接行けば手に入る!
と思ったのですが…そう甘くはありませんでした。
グアナファトからアグアスカリエンテスまではナビの表示では2時間でしたが、実際は3時間以上かかりました。そして高速道路の料金がやけに高かったです。
下道で行ってもほとんど変わらない一本道なので、下道で行く事をお勧めします。
アグアスカリエンテスから日帰りするのは厳しそうだったので、またまたAirbnbを利用。
今回のホストはスナックのママをしてそうなおばちゃん。アガタデフエゴを探しに来たと伝えると、
「あら、それだったら確かセントロの近くで売ってるのを見た気がするわ。私もセントロに用事があるから一緒に行こうか?」
と親切に教えてくれました。
こんな感じだとすぐに見つかりそうだなと思ったので、おばちゃんにはありがたく場所だけ教えてもらい自分たちだけでセントロへ行くことにしたのですが、後から考えるとここがミスジャッジでした。
セントロには石を使ったアクセサリーを扱っている店が連なっている商店街みたいな道があり、何軒か覗いてみたのですがファイヤーアゲートはありません。
たまに見かけても欠片のような小さいものばかり。
もう少し大きなサイズの原石が欲しかった私たちは早々にアグアスカリエンテスに見切りをつけて、鉱山があるカルビージョへ向けて車を走らせました。
アグアスカリエンテスからさらに50分ほど走ると、美しい街並みが残る小さな山間の街、カルビージョが現れます。
この街も前回訪れたテキスキアパンと同じく、メキシコ政府が認定しているプエブロマヒコ(Pueblo Magico)の街です。
プエブロマヒコとは魔法がかかったような昔の街並みが残る小さな美しい街のこと。
丘の上には教会がありそこから街を一望することができました。
カルビージョの教会 |
そんな小さくて可愛いカルビージョの街で、虹色の原石を妄想しながら聞き込みをしてみるものの、反応が薄くいまいち手応えが無い。
小一時間ぐらい街をうろうろして、ようやくファイヤーアゲートを知っている人に行き当たった。
「ファイヤーアゲートは知ってるけど、どこに売ってたかなあ…。あ!確かそこの店のおばちゃんがもってるぞ」
そう教えてもらった店に行くと、おばちゃんが自信満々で見せてくれたのは紙に貼り付けられた小さなファイヤーアゲートの鉱物標本。
確かにものはそうなんだけど、小指の爪の先ほどもないサイズ。想像していたものよりはるかに小さい。
うーんおかしいなあ。
インターネットで出回っているファイヤーアゲートはほとんど100%と言ってもいいくらいカルビージョ産だったのに。
結局初日はカルビージョの街には原石が無いという事がわかった事以外、特に収穫を得ることができなかった。
意気消沈して宿に戻り、明日のことを考えた。
このまま手ぶらで帰るのは悲しすぎる。
こうなったら明日こそ直接鉱山に行こうと思って、英語やスペイン語のページをくまなく調べてみたけれど、鉱山の住所がいまいちあやふやではっきり出てこない。
しばらく手こずったけどそれでもようやくそれらしい地域を絞り込むことができた。
だけど、Googleストリートビューで見てみるとそこは売店が一軒、散髪屋が一軒あるぐらいの田舎の村。
石を売っている気配はない。
不安だけど行ってみるしか当てが無いしなあ…。
こんなとこまで来ておいて空振りだったらどうしようと、もやもやした気持ちを抱えながらその日は就寝。
2日目。
直接鉱山に行こうと思っていたんだけど、チェックアウトをしようと思ってホストのおばちゃんと話していると、なんとおばちゃんの胸にはファイヤーアゲートの原石をあしらったネックレスが!
それそれ!それやんおばちゃん!
聞くと、アグアスカリエンテスの街で原石を使ったアクセサリーを売っているアルテサニア(ものづくりをしている人)がいて、昨日買ったのだという。
おばちゃんのいう事最初から聞いていればよかった!
その人たちがいる場所をおばちゃんに詳しく聞いてお礼を言って、もう一度アグアスカリエンテスのセントロへ向かった。
教えてもらった場所に着くと、確かにアルテサニアが10組くらい、簡単なテーブルにそれぞれの作品を並べて道売りをしている。
その中には数は少ないけど、お目当てのファイヤーアゲートを使ってアクセサリーを売っている人もいた。
よく見ると、同じような商品構成でも扱っている石のクオリティはまちまち。
一番綺麗な石を扱っていた金髪ドレッドのお姉さんに話を聞くと、昨日訪れたカルビージョの手前にサンタデオという村があり、そこにファイヤーアゲートを売っているドンがいることを教えてくれた。
さらにお姉さんはニコニコしながら、親切にドンの連絡先も教えてくれた。
…キャッチ出来てる!
昨日の教訓を生かして一つ一つ情報を正確に辿っていく事で、ファイヤーアゲートに近づいていってる事が感じられる。
再び昨日と同じ道を走ってカルビージョ方面に向かい、街の手前で脇道に入ってドンのいる村サンタデオへ。
村の教会の前でおしゃべりしていたおじいさんにドンの事を聞くと、家まで案内してくれた。
坂の上のドンの家 |
坂を上がった頂上にドンの家はあった。
中に入ると家族がたくさん出てきてくれたのだけど、ドンの姿はない。
家族の話によると、多分畑か山に入ってるそう。
しばらく家の軒先で待たせてもらっていたが、待てども待てどもなかなか現れないドン。
帰りの時間を気にしてそわそわしていると、それを見かねた娘さんが畑まで一緒に探しに行こうと言ってくれた。
メキシコ人の面倒見の良さに感謝しながら、娘さんと一緒に車に乗って別の山へ。
そこは気持ちのいい風が吹く見晴らしのいいグアヤバ(グァバ)畑だった。
収穫期であるグアヤバのいい香りが辺りを包んでいる。
娘さんとグアヤバの木 |
そんなグアヤバ畑を奥へ奥へ進んでいくと、ついにドンが現れた。
ドンはもみあげと口ヒゲが一直線に繋がったオシャレなおじいさんだった。
にっこり笑って握手を交わす。
一族を支えている風格があり、威厳に満ちた雰囲気。
「グアヤバ好きか?今が一番美味しい時期なんだ。」
と、辺りに生っているグアヤバをもいで私たちのカバンがパンパンになるまでとれたてのグアヤバを分けてくれた。
畑からの景色とドン |
ようやく出会えたドンと一緒に家に戻ると、さっき私たちが座っていた軒先の椅子の下から無造作にバケツを取り出した。
バケツの中には山盛りのファイヤーアゲート。
ついにここまでたどり着けた。
バケツいっぱいのアガタデフエゴ |
一つ一つ水につけながら石を見ていると、途中で娘さんがタコスやコーラを出してくれた。優しい心遣いを受けて、まるで田舎に遊びに来たような懐かしい不思議な感覚になる。
帰りの時間もあったのでゆっくり食べられなかったけど、穏やかな家族に見守られながらじっくり石を選んだ。
アガタデフエゴは原石のままではその虹色の面を見る事はできない。水につけた状態、もしくは表面を研磨する必要がある。
ドンにこの近くで石の研磨をしてくれる人がいるか聞いてみると、ケレタロに研磨職人がいると教えてくれた。
ケレタロか…。幹線道路太くて速くて運転が怖いから行きたくないんだけどなあ…。
満足できる石をいくつか譲ってもらい、お礼を言ってドンの家を後にした。
さて、この原石を研磨してもらわないと。
次はケレタロだ。
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