Las Posas
ワステカで心身ともに潤った次の日、サンルイスポトシの南部にあるヒリトゥラという小さな集落に、イギリス人がそこに住みながら建築を続けた不思議な庭園があると聞いたので訪ねてみることにしました。
ヒリトゥラは峠と峠の間にあるような山の中の小さな村で、私達が訪れた時は霧が濃くかかっていて、目を凝らしても20m先くらいまでしか見通すことができませんでした。
霧の中に現れたその空間は、非現実なのにどこか懐かしい気持ちにもなる庭園でした。
ここに移り住んだイギリス人の名はエドワード・ジェームス。1949年から始めた庭園造りは亡くなる直前の1984年まで続き、ジャングルに自分のイマジネーションを具現化した庭園を造った。
総工事費はなんと500万ドル。
エドーワード・ジェームスは謎の多い人物で、ダリやマグリットをパトロンとして支援していたり、ピカソやクレー、ジャコメッティなどの作品を集めていたアートコレクターとしての顔があったり、家系もイギリス王室に縁があったんじゃないかと言われているような人物。
そんな粋狂なおじいさんの庭園が”Las Posas”(ラス・ポサス)。
”Posa”はスペイン語で”池”のことで、その名の通り敷地内には渓流を小さなダム状にした池がたくさんあった。
ラスポサスはとにかくトリッピーな空間。エッシャーのだまし絵を現実に建築物としているような庭園で、その場所にいるだけで意識が普段と違う状態になった。
非現実的な建物ばかりなんだけど、ジャングルの景色の中に不思議と安定して収まっている。
自分の庭に美しい滝があるなんて夢のような話だけど、滝のある土地を買ってそこに家を建てれば、それでもう実現する。
気持ち良さそうな池は段々畑のようになっており、途中には滑り台みたいな部分もあった。
流れている水は澄んでいて、周りに生えている植物も見たことのない種類が多かった。
エドワードさん、遊びまくっていたんだろうな…。
Las Posasには先のない階段や、壁のない部屋が多く作られていて、想像を掻き立てられた。
そこに意味を見出すことは必要ないんだけど、どうしても意味を考えてしまう。
”家”という存在は本来、安全に住むためにある。
だから、雨や風を避ける屋根も壁も必要だ。
階段は上の階に移動するために存在しているはずだから、その先に空間がなければ意味をなしていない。
そして、機能がない飾りは”家”にとっては余剰なものだ。
ーというのは私たちにとっては当たり前の概念だけど、家の概念自体も場所や時代が変われば違っていて、現代でも国や地域によって違全然違う。
ワステカ族の家も屋根と壁の間には空間があったし。
せっかく自分達で家をデザインする機会があるのなら、エドワードさんを見習って遊びの要素も取り入れたいな。
デザインは精神に作用するので、言葉では説明しにくくて分かりにくい役割だけど、重要なポイントだと思う。
環境が心理に与える影響はとても大きい。
壁は絶対欲しいですけどね。
とにかく、いろいろな感性が掻き立てられる場所なので、遠いけどおすすめです。
ここを教えてくれたのは、イギリス暮らしが長い人で、私はてっきりイギリスと思っていて・・・・いざ行こうとしたらメキシコで
返信削除無論バラガンも好きなので、メキシコは憧れていますけれど、シティから8時間9時間では・・・・エコノミー症候群の順番待ちのような血流では無理です(><)素晴らしい情報をありがとうございます。
marika様
返信削除コメントありがとうございます。
建築がお好きなんですね!
そうなんです、なかなか遠いところにあるのです。
バファリンが血をサラサラにする効果があるようで、エコノミー症候群になるかたには効くようですが…。
ワステカ地域はメキシコの中でも一番好きな地域で、自然も素晴らしいです。
いつか、良いタイミングでゆっくりとした旅程でいけるといいですね。