2016年11月4日金曜日

原因不明の蕁麻疹が全身に出たので、メキシコ庶民の味方メディコ(診療所)に行ってきた。

ふと胃変に気がついたのは仕事の帰り道。
手の甲にポツポツと発疹が出ていた。
虫刺されでもないし、何かのアレルギー反応のよう。


それが夜になるとだんだん発疹の数が増えてきて、かゆみも強くなってきた。
蕁麻疹の島がだんだん繋がって大陸になっていく。
最初は体の内側、皮膚の柔らかい部分に広がっていたが、結局指先から頭皮まで全身に症状が広がった。
かゆみも強く、その晩はほとんど眠れなかった。


翌朝うつらうつらと目をさますと、少し引いている。
ほっとして仕事に行ったが、結局昼過ぎくらいから再び症状が出てきて、痒くて痒くて仕事も手につかなくなったので早退して病院へ行くことに。







メキシコの医療事情


メキシコで病気になった場合の選択肢は、私立病院、公立病院(IMSS)、薬局に併設されている診療所(Medico)、ホメオパシーによる治療と、いくつかあり、患者の生活レベルによって行き先が決まってくる。


メキシコ人は大抵無料で利用できる公立病院(IMSS)を利用している。
ただ、IMSSは待ち時間が長いため、簡単な病気の治療であればMedicoやホメオパシーで必要なものを買って対応するのが一般的。
ただ、一般的といっても貧富の差が強烈なメキシコではその「一般」という層がいくつもある。
まるでインドのカーストのようにその格差は明確で、それぞれの経済事情により生きる世界も違っている。


日本人は私立病院を利用している人が多いが、私立なだけに医療レベルも金額も大きく差がある。
まだ海外旅行保険が適用されてるときに、一度血液検査を私立の病院で受けたことがあるが、検査だけでなんと1000ペソも請求された。
お世辞にも医療レベルが高いとは言えないキンタナ・ロー州では医療もビジネス的な側面が強く、医者の目は$マークに見えた。


その反面、公立病院であるIMSSの医療水準は医療大国として知られている隣国のキューバのそれと比較しても遜色ない、というか現状メキシコの方が国を挙げてしっかり取り組んでいる、
と、JAICAで発展途上国の医療に従事していたという日本人の医師が話していた。


ただ、私たちはまだIMSSの番号を持っていない。
メキシコに来てからホメオパシーは幾つか試してみたが、自分の体験した感想としては所謂フラシーボ効果の枠を超えるほどの効果は感じられず、今回のような緊急の症状に対して即効性は期待できない。


そんなわけでまずは薬局の横にある診療所に行ってみた。

左の店舗が薬局。車の奥の扉の奥にドクターがいる。





蕁麻疹の原因は…?


早速メディコで診てもらう。
ドクターの名はアントニオ。
あしたのジョーに出てくるような昭和の町医者風で、裏の仕事も引き受けてくれそうな少し崩れた雰囲気をもつお爺さん。


食事の内容、生活習慣について幾つか問診を受ける。
そして一言。


「はっきりとした原因はわからないが、おそらく豚だな。朝食で食べたハムに反応している可能性が高い。


豚のハム?
豚肉は今まで食べ続けてきたけど、一度もこんな症状になったことはなかった。
ただ、症状が出る日の朝食に食べた豚肉のハムはスーパーの特売商品だったので、もしかしたらそれが原因だったのかもしれない。
安かったもんな…。


ここは診療所なので、精密検査はできないし正確な原因は特定できない。
前にグアナファトでもMiaが体調を崩し、これまた原因不明の高熱が出たので同じようにメディコに行ったが、その時のドクターは原因を最後まで教えてくれなかった。
だけど、アントニオ先生はおそらくの原因を伝えてくれたので安心できた。


「薬局で買う注射のアンプルは1本でいい。それで今晩の様子を見て、あしたまだ引いてなかったらもう1本追加しよう」


薬の買い方の指示も合理的で良心的。
隣設している薬局で薬と注射器を買って、もう一度アントニオ先生に注射を打ってもらう。
打ってもらった薬はデキサメタゾン。ステロイド系の抗炎症薬だ。
刺激物を控えるように言われ、一晩様子を見ることに。
控えるように言われた食材は豚肉、卵、貝類、チョコレート。
コーヒーは大丈夫で牛乳はたくさん飲むように言われた。
(メキシコでは肌のトラブルには牛乳が効くと言われている)


出された薬。ビタミンE、ステロイド系の塗り薬、肌の乾燥を防ぐ大豆プロテイン、
抗アレルギーのアンプル(Dexametasona)
これ全部で240ペソ。







その後の経過


メキシコの注射は日本の薬のようにすぐは効かない。
効いてないんじゃ…と不安になってくる2、3時間後くらいから少しずつ、でも確かに効いてきた。
蕁麻疹は目に見えて引いてきて、塗り薬でかゆみも抑えられた。
その晩はぐっすり眠ることができた。


翌朝目をさますと、ずいぶんましにはなっていたが、まだ手の甲や足の指など、体の中心から遠い部分にまだ少し発疹が残っていたので、念のためもう一度再診してもらうことに。


昨日と同じように問診を受け、薬局で薬を買い、2本目の注射を打ってもらう。


「おそらくこれで快方に向かうはず。もし明日もまだ発疹が残っていたらもう一度おいで。その時は診察料金はいらないから。でも、これで終わることを祈っているよ。」


メディコの問診料は45ペソだ。
同じ医療従事者でも高額な治療費を平然とした顔で請求してくる私立病院のドクターとは全く逆の対応に心を打たれる。


感謝の言葉を伝えて、今日の治療費45ペソを渡す。
アントニオ先生は折りたたまれた20ペソ札にキスをして、胸の前で十字を切った。


「ありがとう。君の回復を願っているよ」


診察料は45ペソ。夜と日曜は50ペソ。


翌日には完全に蕁麻疹は引いていた。
蕁麻疹は体調が悪くなるわけではないけど、原因不明なことが多く精神的に落ちる。
3日ですっかり直してくれて、アントニオ先生には本当に感謝した。


おそらくメディコも他の病院と同じように、場所やドクターによってバラツキがある。
ある人は
「あんなとこ行ったらダメだよ。賞味期限の切れた薬出されるよ」
とも言っていた。


でも、自分の経験は違う。
アントニオ先生の穏やかな笑顔やはっきりとした意見は、インターネットで蕁麻疹を調べまくって落ちていた自分を安心させてくれたし、2本の注射で症状を治してくれた。
隙があれば稼いでやろうという人が多いこのエリアで、純粋に人助けのために生きている人に出会うと余計に美しく見える。
これが自分の経験。







海外で病気になると、日本で病気になるより遥かに不安になる。
インターネットでいくら調べてもその不安は決して解消されない。
インドでお腹を壊した時もそうだったけど、もう死ぬのかなと思うような症状でも、地元の医者にかかると案外すぐ治ることもある。


その場所を選んで住んでいるのだから、その場所で生活している人たちを信じて託すことが、一番科学的に正解に近い行動なのかもしれない。

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