2016年11月19日土曜日

チビータのセビッチェ



先日、以前から気になっていたイスラ・ブランカ(Isra Blanca)へ行った。
カンクンに引っ越してきてすぐのころにも一度行ってみようとしたのだが、途中の人気がない道で警察にカツアゲされてしまった。
それ以来、その道が軽いトラウマになってしまい、気にはなるもののどうしても気が進まず足が向かわなかった。


それでも、しばらくこの場所で暮らしていくうちに警察の対応にも慣れてきた。
奴らに絡まれない最善の方法、それは目を合わさないこと。
これに限る。


日本だと、露骨に目を背ければ逆に疑われそうなものだが、こちらでは完全に無視するのが一番安全。


愛車の具合はあいかわず微妙なので、オフロードの道に少し不安はあったけど、ずっと行きたい場所だったので意を決して昼前に家をでた。





イスラ・ブランカへと続く道はいつの間にか整備されていて、アクセスは容易になっていた。
前回は落ち込んだ気分で走っていたから気が付かなかったが、道中の景色はすでにとても気持ちのいいものだった。
視界に人工物がどんどんなくなり、マングローブのジャングルが濃くなっていく。


ふと、緑の切れ間からカリブ海独特の浅葱色の海が目にはいった。
それはカリブの海を見慣れた目にも刺激的な美しい海だった。





思わず声が出る。
息を飲むんじゃなくて、声を出してしまう。
あまりに綺麗なので、そのうち笑い出してしまった。


駐車場に車を止める。
料金は30MXN。
早く遊びたくて焦る気持ちを抑えながら、必要な荷物を降ろしていく。


イスラ・ブランカはカンクンのホテルゾーンと同じような地形をしている。
細い中州のような地形で、右手にはカリブ海、左手には湖が広がっている。
ホテルゾーンよりも陸地の幅が狭く、視界を遮る建物もなにもないので、カリブ海と湖の両方を同時に見る事ができる。




ちらほら他にも人はいるけれど、なんせ広いので気にならない。
ついさっきまでの日常をすっかり忘れてしまう圧倒的なトリップ感。


まずは海に入って、ビールを飲んで、潮風を浴びて寝転ぶ。
視界いっぱいに広がる水色の海を見ていると、海の色が何層にも分かれている事に気がついた。


面白いことにこの場所の海の色は刻一刻と変化していく。
太陽光線による時間の変化ではなく、紺碧の青から薄水色になり、また遠くから浅葱色がやってくる。


止むことのない緩い潮風を浴びながらひたすら海を見ながら寝転んでいると、頭の中は空っぽになっていく。


「気持ちいいねー」

「うん。家の近くにこんな場所があって良かったね。」





ビーチと反対側の湖の方ではカイトサーフィンを楽しんでいる人たちがいて、ふわふわと風を捕まえながら気持ちよさそうに湖面を滑っている。
西日が湖面にきらきらと反射して、波のない穏やかな水面に細かな模様を描いている。


「カイトサーフィン面白そう。やってみたい。」

「やってみたいね。それにしてもいろんなこと考えるね人間。」






「湖のほうも綺麗だから、見に行ってみよう」

「いいよー。あれ、なになれ?」


と、夢見心地でフラフラと湖のほうへ向かうと、見慣れない形の生き物がいる。
よく見るとカブトガニがいた。






「なにこれきもい…」

「うん…。きもいね。」


バンコクの屋台で一度みて以来のカブトガニは、なんだか生理的に気持ちが悪く、一瞬で目が覚めた。


近くには足が黄緑色した変な水鳥や、大量のカニがいたりして、ビクッとなりながらしばらく湖沿いを歩く。







すると、遠くの湖面にピンク色の点がいくつかあることにMiaが気づいた。


「あれ…、フラミンゴやん!」

「え!野生の?ついに?どこどこ?」


よーく目を凝らして見ると、確かに鶴のような姿をしたピンク色の鳥が何かをついばんでいる。
動物園に羽を拾いに行くほど好きなフラミンゴ。
それが目の前、といっても随分離れてはいるが、目の前の延長線上にいる。






美しすぎる海とフラミンゴ。
そのちょうど中間地点の湖の浅瀬で、何かを拾っている人がいた。


その姿を見てピンときた。


「あれは…チビータ拾ってはるわ!」

「フランシスコが言ってたやつ?カタツムリ?」


そう、フランシスコが教えてくれたチビータに違いない。
カタツムリって言ってたけど…、





「カタツムリじゃない!」

「カタツムリ違うわ。貝やわ。」


フランシスコが美味しい美味しいって言うから、チビータって何?と聞くとカタツムリの画像を見せてくれたので、すっかりカタツムリだと思っていたが、チビータは貝だった。


「フランシスコ、チビータのことカタツムリって言ってたやんな?」

「言ってた。写真でも確認した。まあええわ。拾お拾お。」


よく見るとあちこちにチビータがいる。
ゆっくり動いているのですぐに見つけられる。





「おるおる。いっぱいおるよー。」

「ねー。そこら中におるおる。興奮するね!

 あっちにも…は!

 …カブトガニもおる。怖いわ…。」


「カブトガニきもいね。」


何も悪さはしないけど見た目が気持ち悪いカブトガニを恐れながら、チビータを拾った。











イスラ・ブランカを満喫して家に帰ると、隣の猫が上から覗いていた。
触らしてくれない子けど、なにか気になるみたい。
チビータ効果かな。





チビータはフランシスコのお父さんが教えてくれたレシピ通り茹でてセビッチェにしていただいた。


肝心の味はというと、サザエを思い出すような貝の味。
これは美味い!!


醤油と合わせると日本の夏の記憶がフラッシュバックする。
ちょっと涙ぐみそうになる。
チビータ…。


とくに肝の部分が野生味を全く感じさせない濃厚かつ繊細な味。


「美味い…!これはパリや銀座で出てきてもおかしくないレベル!」

「そんなに?でもほんと美味しいね。お父さんのレシピもバッチリ。」






あの場所は遊べる。
自分たちの好きなことが溢れてる。


二人とももう他はもういいや、と思ってしまった。


また来週行こうかな。

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